平成19年(2007年)~令和元年(2019年)度の所在・試掘調査

 

 ☆所在・試掘調査とは何か 

 

 土木工事などによって土地を掘り返すと、土地に埋まっている文化財(埋蔵文化財)を破壊してしまうことがあります。

 このような破壊を避けるため、これまでの調査などで文化財が埋まっていることのわかっている土地は「埋蔵文化財包蔵地」として、北海道と市町村の教育委員会がその位置や範囲を示した公的な資料を作り、公開しています(「北の遺跡案内」)。しかし、地面の下に埋まっていることなので、厳密にどの範囲、どのくらいの深さに、どのような文化財が埋まっているのかはわかりません。また、埋蔵文化財包蔵地以外の土地では文化財が埋まっているかどうかさえ、前もって知ることができません。

 そのため、偶然出土した文化財の保護のために工事が遅延することや土木工事によって文化財が破壊されることなどが起こることが考えられ、そのようなことが起こると、社会的に大きな損失となり得ます。そこで、開発・建設などの事業者と北海道・市町村の教育委員会とが前もって協議をおこない、工事が埋蔵文化財に影響を与えるかどうかを判断したうえ、前もって文化財を掘り出しておく、あるいは工事の範囲や深さを変更するなど、できるかぎりの調整をおこない、工事中に突然文化財が出土することのないよう努めております。これを「埋蔵文化財保護のための事前協議」と呼びます。

 計画中の工事などが埋蔵文化財に影響を与えるかどうか判断する目的で、北海道または市町村の教育委員会が小規模な発掘をおこないます。これが「試掘調査」で、通常20m四方に1箇所程度の割合で1~2m四方の大きさの穴を掘り、文化財の有無・深さ・内容などを調べます。また土地を掘る前に、まず工事予定地を歩いて詳しい地形や地表に顔を出している文化財の有無、これまでの開発歴などを確かめ、試掘調査その他の措置が必要かどうか検討する場合もあり、これを「所在調査」と呼びます。

 

 所在・試掘調査の内容は、通常は発表・報道されることはありません。しかし、本格的な発掘調査で重要な文化財が発見できるのは、多くの場合において前もって所在・試掘調査が実施され、その結果に応じた発掘調査の計画・準備があるからなのです。表1では所在・試掘・発掘調査が行われた道内の市町村数の割合を示しています。
 道内で工事の前に文化財を記録保存するための本格的な発掘調査は、平成19年(2007年)~令和元年(2019年)度において平均26市町村で、令和元年度は29市町村で49例の発掘調査が実施されました。

 

 

 「埋蔵文化財保護のための事前協議」の多くは事業者と北海道教育委員会の間でおこなわれ、地元市町村の教育委員会はこれに意見を述べたり調査の実施に協力したりする立場です。ただし、札幌・函館・小樽の3市だけは、地方分権の進展によって、公共事業を除いて北海道が関与せず、事業者と市の教育委員会との間だけで事前協議をおこなうことになっています。これら3市の教育委員会が独自におこなう事前協議のために実施された所在・試掘調査の統計も、平成20年(2008年)度分から3市の御協力を得てこのページで公開することにしました。

 

 

 

 

 

 ☆所在調査の実績

 

 所在調査を表2で示しました。すでに説明したように、平成20年(2008年)度分からは札幌・函館・小樽の3市が独自に実施した調査の数字が加わっています。以下の文章と図表ではこの3市を「権限市」と表現しております。
 所在調査の結果、埋蔵文化財の包蔵地と推定された区域は、地表の踏査結果と過去の記録から判断しているので、調査段階での包蔵地の数や範囲はあくまで推定になります。そこで、さらに包蔵地の数や範囲を絞り込む必要があるため、試掘調査を実施して文化財の状況を確認することになります。

 所在調査の対象地は例年農業基盤整備事業量の多い地域に集中する傾向にあります。平成19年(2007年)~平成30年(2018年)度では、十勝、オホーツク、上川、空知管内の順で調査面積が高い値を示しており、令和元年(2019年)度は十勝管内で高い値を示しています(図1)。

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     調査原因となった事業別にみると、令和元年(2019年)度も農業関連事業が多いことがわかります(図2)。

 

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  農業関連と河川・海浜の事業以外では、例年、その他様々な開発によるものの値が最も大きく、次に道路・太陽光風力発電等によるものが多い状況です(図3)。

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   以上の所在調査の結果、計画中の工事が埋蔵文化財に影響を与える、あるいはその可能性があると判断された土地は、令和元年(2019年)度では279.776haとなります(表2)。所在調査で推定された埋蔵文化財包蔵地は、調査面積の割合でみると平成19・20年度が約3%、21・22年度が約5%、23・24年度が約3%、25・26年度が約3%、27・28年度が約4%、29年度が約0.7%、30年度が約9%、令和元年度が約1%を占めます。地域別にみると、令和元年(2019年)度はオホーツク・十勝・胆振管内の順で包蔵地と推定される面積が大きくなっています(図4)。

 

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 農業関連、河川・海浜、その他の事業別でみると、農業関連事業に伴う調査で推定された包蔵地の面積が高い値を示しています(図5)。

 

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   農業関連と河川・海浜以外では、例年と同様に令和元年(2019年)度はその他開発、道路事業を起因として推定された包蔵地の面積が大きくなっています(図6)。

 

 

 

 

 

 

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 ☆試掘調査の実績

 

 試掘調査の実績については、平成19年(2007年)~令和元年(2019年)度の調査件数等を表3にまとめました。令和元年(2019年)度は調査127件、調査面積298.984haとなっています。
 また、令和元年(2019年)度に実施された試掘調査の結果、埋蔵文化財の包蔵地と確認された区域は66箇所・38.928haありました。

 

 

 

   地域別では、例年、石狩、後志、宗谷等の占める割合が高いことがわかります(図7)。

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 事業別では例年、農業関連事業やその他開発に伴うものが最も多いですが、令和元年度分をみると所在調査等で試掘対象地が絞り込まれているため、所在調査のように圧倒的に高い値を占めてはいません。農業関連以外では道路事業、土石採取、河川・海浜事業、鉄道・港湾事業に伴うものが多くなっています(図8)。

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 試掘調査の結果、埋蔵文化財が確認され、工事が埋蔵文化財に影響を与える、あるいはその可能性があると判断された土地は、令和元年(2019年)度では約13%にあたります(表3)。地域別にみると、平成19年(2007年)~平成30年(2018年)度では後志、石狩、オホーツク、渡島、胆振管内の順に多く、令和元年(2019年)度は石狩管内で大きな値を示しています(図9)。

 

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  また、確認された包蔵地の原因事業別の面積は、所在調査と同様に農業関連によるものの値が高くなっています(図10)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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☆調査結果に基づく取扱い

 

 所在・試掘調査の結果や工事計画の内容を検討したうえ、「埋蔵文化財保護のための事前協議」を通じて、事業者と北海道・市町村の教育委員会との間で保護のための取り扱いが取り決められます。この取り扱いは工事の内容、文化財の保存状態などに応じていくつかの種類に分かれます。平成19年(2007年)~令和元年(2019年)度までの取り扱いについては表4にまとめています。

   「現状保存」は埋蔵文化財の存在する区域を施工範囲から除き、現状のまま保存するものです。地表に姿を現した状態で残っている竪穴住居跡やチャシ跡、そのほか保存状態のよい貴重な文化財ではこの扱いが必要になります。

   「発掘調査」は工事によって埋蔵文化財が破壊される、または今後調査できなくなる場合に、工事の前に文化財の調査を行い、文化財を丁寧に掘り出すとともに、現地から移動できない文化財については測量・撮影などにより詳しい記録を残すものです。工事の必要性、公共性が高く、切り盛りが大規模で、なおかつ土地を現状保存することの困難な道路工事などを中心にこの扱いがとられます。

   「工事立会」は埋蔵文化財への影響が小さいと判断される工事の場合に適用され、農業関連の事業の多くではこの扱いがとられています。教育委員会の職員が実際の施工に立ち会い、実際に工事による文化財の破壊が生じていないことを確認しますが、その際に所在・試掘調査結果からは予想できなかった文化財が確認されることもあり、この場合は緊急に文化財の回収や記録作成が必要となります。なお埋蔵文化財が存在するとは断定できないが、周知の埋蔵文化財包蔵地の隣接地での施工が文化財に影響を与える心配がある場合などにも工事立会を実施することがあり、これを「念のため工事立会」として区別しています。

   「慎重工事」は埋蔵文化財の存在する土地で工事が行われるが、文化財が深く埋まっている、その他の理由で工事の悪影響はないと考えられる場合の取り扱いです。ただし、事業者は事前に法律に基づいて工事計画の届出・通知を行い、その計画を守って文化財を保護しながら施工する義務を負います。

 

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