教育行政執行方針(令和5年6月)

教育行政執行方針(令和5年(2023年)6月)

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Ⅰ 教育行政に臨む基本姿勢

Ⅱ 重点政策の展開
1 子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進

2 学びの機会を保障し質を高める環境の確立

3 地域と歩む持続可能な教育の実現

Ⅲ むすび
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Ⅰ 教育行政に臨む基本姿勢

 令和5年第2回定例会の開会に当たり、北海道教育委員会の所管行政の執行に関する主要な方針を申し上げます。

 人口減少や少子高齢化の進行、情報技術やグローバル化の進展などにより、人々の価値観やワークスタイルが大きく変わる中、従来の知識や経験だけでは解を見いだすことが難しい時代となっています。
 こうした変化の激しい時代にあって、子どもたちが、自らの良さや可能性を認識するとともに、全ての人を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら、北海道の未来を切り拓く持続可能な社会の創り手として成長していくことができるよう、必要な資質・能力を育む教育行政を推進してまいります。


Ⅱ 重点政策の展開

 次に、令和5年度において、重点的に取り組む政策を申し上げます。

 

1 子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進

 第一は、子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進についてです。
 
 新しい時代を生きる子どもたちに必要となる資質・能力を確実に育むとともに、多様な子どもたちを誰一人取り残さない教育を推進することが重要です。
 
 このため、まず、幼児教育においては、保育者への研修や助言を通じ、幼児期の子どもの特性や発達の課題に応じた質の高い教育の提供を目指すとともに、幼児教育施設と小学校との円滑な接続に向けた取組の充実など、幼児期からの学びの基盤づくりを推進します。

 義務教育においては、ICTを活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現や、家庭・地域と連携した望ましい学習・生活習慣の確立、少人数学級編制の拡大や小学校高学年における教科担任制の推進、コミュニケーション能力を重視した英語教育の充実や外国人児童生徒への学習支援に取り組みます。
 また、アイヌの人たちの歴史・文化や、北方領土をはじめ各地域の歴史等を学ぶふるさと教育を推進するとともに、規範意識や協調性、思いやりや生命を尊重する心を育む道徳教育の充実を図るほか、貧困や気候変動といった世界共通の課題解決に向けた目標であるSDGsを達成するための分野横断的な教育活動を推進します。
 さらに、子どもたちの体力向上に向け、体育専科教員の活用や教員研修の拡充を推進するとともに、多様化する健康課題への対応や、望ましい食習慣の定着などの健康教育の充実を図ります。

 高校教育においては、小・中学校での学習の成果や課題を踏まえた高校段階での授業づくりを促すとともに、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善や、各教科の学習を実社会の課題解決に生かしていくための教科等横断的な学習の充実を図ります。
 また、産業界と高校が一体となった次世代の職業人の育成や、インターンシップの推進によるキャリア教育の充実、海外留学や道内居住留学生との交流を通して多様な文化や価値観に触れる機会の創出を図るほか、学校の活性化や特色ある教育活動支援などのためのクラウドファンディング事業に取り組みます。

 特別支援教育においては、子どもたちの自立や社会参加に向け、教員の特別支援教育に関する専門性の向上に努めるほか、管理職や特別支援教育コーディネーター等を中心として、一人一人の教育的ニーズに応じた校内支援体制の充実を図るとともに、特別支援学校の教育環境の整備を進めます。

 

2 学びの機会を保障し質を高める環境の確立

 第二は、学びの機会を保障し質を高める環境の確立についてです。
 
 多様な教育的ニーズに対応した学習機会を提供するとともに、子どもたちが安心して学べる体制の構築や、経済的理由等にかかわらず充実した質の高い教育を受けられる環境を整備することが重要です。

 このため、基本的な感染症対策の徹底や、多様な支援スタッフの配置による学校運営体制の充実に取り組むほか、これからの学校教育を支える基盤的ツールであるICTの更なる活用に向け、教員の授業づくりやオンライン学習への支援、学校のICT活用サポート体制の強化を図るとともに、遠隔授業配信センターの機能強化に取り組み、地元の高校に通いながら希望する進路を目指すことができる教育環境の整備を進めます。
 
 いじめや不登校への対応については、望ましい人間関係を築く力を育むなど、いじめの未然防止の取組を充実するとともに、積極的な認知による「いじめ見逃しゼロ」と組織的対応による早期の発見・対応の徹底、不登校児童生徒への初期段階からの組織的・計画的な支援に取り組みます。
 また、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの派遣や、子ども相談支援センターの24時間対応、SNSを活用したチャット相談など、教育相談体制の充実を図ります。

 教員確保に向けた教職の魅力発信については、大学等と連携し、大学生が特色ある教育活動を体験する「草の根教育実習」や、高校生に教職の魅力を伝える「教員養成セミナー」などの充実を図ります。
 また、教員の資質向上については、教員育成指標に基づき「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実を図るとともに、オンラインなど多様な方法による効果的・効率的な研修を実施します。
 さらに、教職員の不祥事根絶に向けて、教職員一人一人に強い自覚を促す指導を徹底するとともに、教職員個々が自らを分析できるチェックシートの活用や、動画を活用した校内研修などに取り組みます。

 学校における働き方改革については、業務改善を図る手引書を活用した教職員の意識改革を推進するほか、ICTの活用や調査業務の見直しによる校務の効率化、スクールサポートスタッフの配置やスクールロイヤーによる法律相談など、学校サポート体制の充実に取り組みます。
 また、部活動の地域移行に向けては、中学校を対象に、休日の部活動から段階的に推進するため、人材バンクの活用やアドバイザー派遣等による支援を行うほか、スポーツや文化を所管する関係部署などと連携し、地域の実情に応じた持続可能なスポーツ・文化芸術環境の整備に取り組みます。

 このほか、子どもたちの教育環境が経済的理由に左右されることのないよう、高等学校授業料や学校給食費などの負担軽減や、地域における学習支援の充実、各種支援情報の提供に取り組むほか、ヤングケアラーと考えられる子どもたちを適切な支援につなげる体制の構築を進めます。
 さらに、様々な理由により義務教育を修了していない方々などの教育機会を確保するため、夜間中学の在り方などの検討を行います。

 

3 地域と歩む持続可能な教育の実現

 第三は、北海道の未来を見据え、地域と歩む持続可能な教育の実現についてです。

 学校や家庭、行政、企業等が連携し、地域の課題解決や地域創生の実現に向けた取組を通じて、学びの場を学校から地域社会に広げるとともに、主体的な地域社会の担い手としての成長を支える教育を推進することが重要です。

 このため、自治体や企業・団体等の様々な主体と学校が連携するとともに、探究型の学習体験を支援するコーディネーターを活用した地学協働体制の構築や、公民館等社会教育機能を生かした地域課題解決に向けた取組を進めます。
 また、高校へのコミュニティ・スクール導入の加速や、普通科新学科の設置の検討、校長の庁内公募のほか、将来を見据えた高校づくりを地域とともに考える仕組みを構築するなど、環境の変化に対応し、教育機能の維持向上を図る高校づくりを進めます。

 子どもたちの安全・安心の確保については、地震や津波など自然災害から命を守る防災教育の充実を図るほか、各地域における1日防災学校や、高校生防災サミットに取り組みます。

 生涯学習の推進については、幅広い世代の方々に学習機会を提供する道民カレッジに関し、プログラムや運営形態などの在り方を検討するほか、家庭・地域・学校等における読書活動の推進と環境整備に取り組みます。

 文化の振興については、文化財の保存・活用を支援するとともに、子どもたちの歴史・文化への理解と北海道への愛着の醸成を図るため、縄文遺跡群を活用した出前授業や世界遺産子どもサミットを実施します。
 また、道立美術館について、所蔵作品のデータベース化などの機能強化や、デジタル技術を活用した鑑賞機会の充実を図るとともに、近代美術館のリニューアルに向け、基本構想中間報告で整理した「目指す姿」を実現するための検討を進めます。

 以上、令和5年度に取り組む重点政策を申し上げました。


Ⅲ むすび

 少子高齢化が進む今後の社会を展望したとき、広域分散型の本道においては、どの地域に住んでいても質の高い教育を受けることができる学びの保障と継続が求められており、全ての子どもたちが、充実した学びのプロセスを通じ、社会に出るための力をしっかりと身につけ、北海道の未来を担う人材へと成長するため、教育の果たす役割はますます大きくなっています。
 本道は、広域分散型であるがゆえの様々な困難もありますが、だからこそ地域ごとに異なる特色があり、子どもたちが主体的に学び、社会の中で生きていく力を育んでいくための絶好のフィールドとなります。

 北海道教育委員会としては、学校・家庭・地域・行政による連携をこれまで以上に深めるとともに、学校教育・社会教育それぞれが有機的に連帯し、全ての人が生涯にわたって学び続ける意欲を持てる、特色と魅力に溢れる教育を実現できるよう、本道教育の発展に全力で取り組んでまいります。

 7月からは「轟かせ 魂の鼓動 北の大地へ 大空へ」をスローガンに、全国高等学校総合体育大会が、36年ぶりに本道で開催されます。
 大会に関わる全ての高校生が輝く大会となるよう、開催地の市町や関係機関などと連携して取り組んでまいります。

 道民の皆様、道議会議員の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

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