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最終更新日:2012年9月29日(土)


鷲ノ木遺跡


世界遺産暫定一覧表記載「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」

◆鷲ノ木遺跡の追加指定告示

 「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」構成資産のひとつ、史跡「鷲ノ木遺跡」(森町)の指定範囲が、このたび文部科学大臣の告示により大幅に追加されました(平成24年9月19日付け文部科学省告示第151号)。

 

◆鷲ノ木遺跡の保存

 鷲ノ木遺跡は平成14年、北海道縦貫自動車道の工事中に発見され、当初「鷲ノ木5遺跡」と名づけられました。翌年森町教育委員会が発掘調査をおこなった結果、高速道路用地の中に縄文時代後期(約4,000年前)の環状列石が存在することがわかりました。遺跡のある区間は調査後に台地を掘り割って道路を作る計画でした。

鷲ノ木遺跡の環状列石

平成15年、調査中の環状列石と竪穴墓域(右奥のくぼみ) 森町教育委員会提供

 約600個の石で築かれた環状列石は、径37mとこれまで道内で発見された環状列石の中では最も大きく、保存状態もきわめてよいこと、また環状列石の傍らに「竪穴墓域」と呼ばれる珍しい遺構が伴うことなどから、非常に貴重なものと判断されたため、北海道と森町の教育委員会はこれを現地で保存するべきであると考え、日本道路公団(当時:平成17年10月から東日本高速道路株式会社)と協議をおこないました。地元森町住民や、日本考古学協会・北海道考古学会などの学術団体をはじめとして各方面から現地保存の要望が寄せられた結果、国の史跡として指定することなどの条件により、高速道路の工事計画を変更し、遺跡のある区間をトンネルとして環状列石を現地で保存することが決まりました。

 道と町の教育委員会は平成17年までに遺跡の現状を詳しく調査・記録し、特に万一トンネル工事の影響が遺跡に及んだ場合も考慮して、レーザー三次元測量により環状列石の現状の詳細な記録を作成しました。その資料をもとに森町は国に史跡指定を申請し、平成18年1月26日に「鷲ノ木遺跡」の名称で指定されました。調査後の遺跡は防水シートなどを被せて保護され、森町が高速道路の管理者である東日本高速道路株式会社と協議しながら史跡の管理をおこなっています。

 平成20年春に始まった史跡指定の区間45mとその前後の緩衝地帯を合わせた延長96mのトンネル本体の工事は、トンネルの構造物から上方にわずか2.5mほどしか離れていない環状列石等に影響を与えないよう、特殊な工法を駆使して平成23年春までに完成しました。観測の結果、史跡内の地盤の変動は1cm以内に抑えられたことがわかっています。
 緩衝地帯は今後史跡の保存のために必要な雨水排水等の整備、さらに公開に際して植栽や園路設置のスペースとして活用される見込みです。
札幌側・函館側のトンネルの上に設置した雪害対策施設には、遺跡名が表示され、高速道路の利用者からも鷲ノ木遺跡の所在がわかるように配慮されています。北海道縦貫自動車道は落部IC(八雲町)から森IC(森町)までこのトンネルを含む約20kmの区間が平成23年11月26日(土)に開通しました。

 

◆範囲の確認と追加指定

 平成18年1月の指定は環状列石等を現地で保存するために、道路用地内で最低限必要な範囲を保護した緊急避難的な性格のものであり、史跡としての価値を有する土地の広がりを見極めたうえでの告示ではありませんでした。そこで森町教育委員会は平成17年度から22年度まで指定地に隣接する土地で小規模な発掘調査を繰り返し、鷲ノ木遺跡全体の範囲と内容を確認する作業を行いました。
 環状列石にほど近い高台の上では住居跡やおそらく墓と思われる配石遺構群が確認され、また遺跡の南東側を流れる桂川に面した土地では縄文時代の遺物が多く出土し、これらの全体が環状列石や「竪穴墓域」を中心として展開された縄文時代当時の埋葬やまつりの様相をよく伝えているものと考えられました。

 この結果をもとに、森町教育委員会は土地の所有者から同意を得た上で以上のような遺跡の範囲を史跡に追加して指定するよう文部科学省に意見具申し、これが国の文化審議会に諮問された結果、今年6月15日に町の意見どおり指定することが適当であるとの答申がなされ、広く報道されました。
 今回の告示はこの答申に基づくものであり、新たに80,136.37平方メートルの土地が史跡に追加された結果、史跡鷲ノ木遺跡は海岸側に大きく広がり、その面積は全体で82,856.87平方メートルとなりました。発見から10年目にして、日本の歴史を理解する上で重要なこの遺跡の保護がようやくあるべき姿に達したということになります。

鷲ノ木遺跡の追加指定範囲

鷲ノ木遺跡(青線囲み)と今回の追加指定範囲(赤線囲み) 森町教育委員会提供

 環状列石は北海道西部と東北地方北部を中心に分布しますが、渡島半島におけるその実態はこれまで十分明らかになっていませんでした。今回の指定により、特別史跡大湯環状列石(秋田県鹿角市)・史跡伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡(秋田県北秋田市)・史跡小牧野遺跡(青森県青森市)などと史跡音江環状列石(深川市)・史跡忍路(おしょろ)環状列石(小樽市)など、南北の環状列石の分布の隙間を埋める遺跡の保護が実現し、今後北海道・北東北を中心とした地域の縄文時代の文化交流や墓制、精神文化などの解明が進むことが期待されます。

 

◆遺跡の整備に向けて

 森町では今後、多くの人が安全に鷲ノ木遺跡を訪れてその価値を理解できるよう、現地の整備事業を行う予定です。ただしその過程では追加指定された土地に整備の手が加えられるよう公有化し、また環状列石などの遺構の保存と活用を両立させるために雨水の浸食から守る方法、石の固定や強化の方法を検討するなどなお多くの課題を解決しなければなりません。常時公開の実現までにはさらに数年を要すると思われます。この遺跡では、厚い火山灰に覆われた地下の遺構をどの程度まで露出させ、見学に供するかも大きな問題の一つです。

 森町では考古学や保存科学、遺跡整備の専門家からアドバイスを得ながらさらに科学的な調査を重ね、その結果に基づいて計画的に鷲ノ木遺跡の整備を進めて行きたいとしています。当面、町の教育委員会が開催する遺跡見学会などの限られた機会を除いて現地を見ていただくことは難しい状況ですが、どうぞひきつづきこの整備事業へ御理解と御支援をおよせくださるようお願いいたします。

鷲ノ木遺跡の配石遺構を視察する海外専門家 

鷲ノ木遺跡の配石遺構を視察する海外専門家(平成24年9月)